この記事では、適応障害の休養期における過ごし方についてお話します。
前回の記事で、適応障害の克服までの過程には①休養期、②準備期、③実行期の3つのステージがあるとご説明しました。
最初のステージである休養期は、「エネルギーを充電し、次のステップに進むための基盤をつくる時期」です。
適応障害になる方は、日頃から真面目でついつい無理をしてしまうケースも多いです。
急に休めといわれてもどう休んだらいいのかわからない、という人もいらっしゃるのではないでしょうか?
休養期のおすすめの過ごし方についてご紹介しますので、ぜひ最後まで読んで頂けたら嬉しいです。
~私の適応障害エピソード~
若手内科医として子育てをしながらフルタイム勤務中、パワハラをきっかけに適応障害を発症。8ヶ月間の休職を経て回復し、復職。
休養期の2つのステージ
私自身の経験として、休養期における心身の状態は①どん底期、②フレイル期の2つのフェーズに分かれると考えます。
それぞれの具体的な内容について、実体験もふまえてご説明します。
どん底期
「どん底期」とは?
ストレス因子による大きなダメージによってネガティブ思考の悪循環に陥り、強いストレス反応が起きている時期
どん底期は、ストレス体験を受けた直後に強い抑うつや不安、恐怖といった症状におそわれる最悪の状態です。
ストレス体験を思い出すことで負の感情が増幅し、それによってストレス体験により一層とらわれてしまう、という悪循環に陥り、そのことに自分でも気づけません。
フレイル期
「フレイル期」とは?
どん底期を抜け出し、ストレス反応が落ち着いてきたものの、ストレス因子について考えた途端に不安定な状態に戻ってしまう時期
フレイル期は、最悪の状態を脱したものの、心理的にはストレス因子から完全に離れられていない状態です。
少しずつ元気が戻り、好きなことをしている間はストレス因子について忘れられるものの、ふとしたことでストレス因子のことを思い出し、ネガティブ思考を繰り返してしまいます。
いくらストレス因子から物理的に離れていても、それを思い出してネガティブな感情が蘇ってしまう状態では、心身は休まりません。
休養期においては、ストレス因子から物理的に、かつ心理的に距離を取れるか、ということがポイントになります。

- 休養期には、①どん底期、②フレイル期の2つのフェーズがある
- 休養期のポイントは、ストレス因子から物理的&心理的距離をとることである
休養期の過ごし方
休養期の目的とは
休養期の目的は、ストレス因子によって被ったダメージを修復し、ストレス因子へのとらわれの悪循環から「いったん」抜け出すことです。
そのために、ストレス因子から物理的にも心理的にも距離をとって心身を休め、エネルギーの充電を行います。
ストレス因子への根本的なアプローチは次の「準備期」で行います。
そのために、休養期で十分にエネルギーを回復させる必要があります。
具体的な過ごし方について、①どん底期、②フレイル期にわけてお話します。
どん底期の過ごし方
どん底期は『応急処置』
どん底期では、ストレス因子へのとらわれによる悪循環をいったん遮断し、ダメージを修復する応急処置が必要です。

- ストレス因子からはなれる
原因となったストレス因子が近くにある状態では、ストレス反応はどんどん悪化するばかりです。
悪循環を断ち切るためには、まずは物理的に距離をとりましょう。
職場のストレスが原因だったのであれば休職をする、原因となった人間関係から完全に離れる、などです。
職場とメール等で連絡をとるのもNGです。
ストレス因子からしっかりと離れて休養に専念しましょう。
(NG行動については、こちらの記事で詳しく説明しています。) - 安心して安全に過ごせる環境を整える
まずは精神科や心療内科を受診し、信頼できる主治医を見つけましょう。
そもそも精神科に行くことはとっても勇気のいることだと思います。
しかし、適応障害の真っ最中には自分のことを客観的に見ることができず、自分が思っている以上に状態が悪い、ということも珍しくありません。
不安だったらご家族に付き添ってもらっても大丈夫なので、精神科を受診しましょう。
適応障害の克服には、個人差はあるものの数ヶ月~年単位の長い期間が必要です。
自分の辛かった体験をシェアでき、寄り添ってくれる主治医との関係性を築きます。
また、休養の場として、家族、友人といった信頼できる人からのサポート体制を整えることも重要です。
ご家族に心配をかけたくない、という気持ちからなかなか打ち明けられない方もいると思います。
しかし、今は適応障害になってしまうほど心身の疲労が限界に達しており、周りからの助けが必要な状況です。
自分の今の状況を周囲に理解してもらい、安心して過ごせる環境を整えて休養に専念しましょう。 - 睡眠を優先して心身を休める
この時期は、無理に規則正しい生活を送ろうとしなくてOKです。
大きなダメージを受け、心身共に消耗している時期です。
ネガティブ思考で疲弊した脳を休め、体力を回復させるためにも、睡眠時間は可能な限り確保しましょう。
主治医に相談し、睡眠薬の力を借りてでもしっかりと寝ることが重要です。
「睡眠薬って一度使い始めたらなかなかやめられないんじゃないか」と思っている方も多いと思いますが、ご高齢の方にも広く使用されているような依存性のない睡眠薬もあります。 - 何もしない
この時期は、「何かをしよう」としなくてOK。
積極的な行動は、エネルギーを必要とします。
好きなものを食べる、寝たいときに寝る、など、気の向いたことや気晴らしをするだけで十分です。
自分がしなくていいことは周りの人にお願いし、とにかく休むことに専念しましょう。
どん底期では応急処置に専念し、とにかく無理をせずに休むのがポイント
フレイル期の過ごし方
フレイル期は『戦略的現実逃避』
最悪の状態は抜け出したものの、まだまだストレス因子へのとらわれの悪循環から抜け出せていない状態です。
生活リズムを徐々に整えつつ、あえてストレス因子から意識を反らし(=戦略的現実逃避)、外からエネルギーを補充していきます。

- 生活リズムを少しずつ整える
無理のない範囲ではありますが、心身のバランスを整えるために規則正しい生活を送ることを心がけます。
ここでもやはり重要なのは、睡眠を整えること。
起きる時間を決め、日中の仮眠を30分以内におさえて過ごしてみると、だんだん夜に眠気がくるようになります。
また、日中に軽い運動を始めるのもオススメです。
過度な運動はかえって疲労がたまってしまうため、散歩やヨガなど、体に負担の少ない運動を行います。
食事に関しても、どん底期の状態よりは食欲も回復してくる時期なので、食べたいものを食べつつも、栄養をしっかりとりましょう。
日によっては生活リズムが乱れてしまうこともあると思いますが、落ち込まなくてOKです。
「今日は出来そうだな」という日からはじめ、少しずつリズムを作っていきましょう。 - ストレス因子から意識を反らす
ただ家で寝ているだけでは、どうしてもストレス体験を思い出してしまいます。
「外」に意識をむけることで、ストレス因子から意識を反らしましょう。
これを、私は戦略的現実逃避と呼んでいます。
好きな趣味をしているとき、運動に没頭しているとき、気がついたらついさっきまで考えていたことを忘れていた、ということはありませんか?
趣味、運動、散歩、気晴らしは、ストレス体験から意識を反らす方法として有効です。
また、自然に触れたり、かわいい動物や子どもとふれ合ったりする時間も、ストレスから離れるオススメの方法です。
これらの活動をすることで、過去のストレス体験につい思考が向きがちな状態を「現在」に意識を集中させ、「マインドフル」な状態にすることができます。
さらに、これらの活動によって充実感や癒しを得ることができ、自分自身を満たすことができます。
「仕事を休んでいるのに、散歩なんかしてていいのだろうか」
「みんなが働いているのに、のんびり趣味なんかしてたら申し訳ない」
こんな罪悪感を抱いてしまう方も多いと思いますが、これも治療の一つです。
自分に合ったやり方をみつけて積極的にストレス因子から意識を離し、エネルギーの充電を行いましょう。
フレイル期では、戦略的現実逃避によってストレス因子から意識を反らすことがポイント
まとめ
いかがでしたでしょうか?
休養期は、適応障害からの克服の最初のステップとなる非常に重要な時期です。
この時期にしっかりと心身のダメージを修復し、エネルギーを充電することで、次の準備期、実行期へとスムーズに移行することができます。
実際に私がどのように休養期を過ごしたかは、こちらの記事をご覧ください。



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