今回は、『適応障害の治療』をテーマにお話します。
適応障害には、実は確立した治療法がありません。
診断基準があいまいで、うつ病と比較しても研究が少ないことが背景にあります。
ネットでは「適応障害になったら、まずストレス要因から離れ、精神療法や薬物療法で治療する」という説明でとどまる記事が多く
どういった順序で治療をすすめるかについて詳しく解説しているものは少ないと感じました。
私自身の経験から、適応障害の発症から回復までには3つのステージがあると考えます。
それぞれのステージにあった過ごし方をしないと、かえって体調を悪化させてしまうおそれもあります。
この記事を読んで、適応障害における3つのステージと各ステージにおける治療の概要について理解を深めていただけたら幸いです。
~私の適応障害エピソード~
若手内科医として子育てをしながらフルタイム勤務中、パワハラをきっかけに適応障害を発症。8ヶ月間の休職を経て回復し、復職。

適応障害における3つのステージ
適応障害には、大きくわけて①休養期、②準備期、③実行期の3つのステージがあります。
それぞれの時期は境界がはっきりしているわけではなく、体調の変動がありながら徐々に移行していくイメージです。
また、それぞれのステージの期間は人によってさまざまです。
各ステージの概要について、説明していきます。
ステージ1:休養期
休養期は、適応障害を発症した直後の強いストレス反応が現れている状態で、とにかく休むことが必要な時期です。
具体的には「ストレス因子への過剰なとらわれ」があり、抑うつや不安といった症状が著しく、判断能力が低下しています。
この時期には、受けたダメージを修復するために、とにかく休養をとるのが重要です。
無理をせず、自分の身体と心の声に耳を傾け、エネルギーの回復を待ちましょう。
ステージ2:準備期
準備期は、休養期を経てエネルギーが回復してきたころから始まります。
ストレス因子から離れていれば比較的元気に過ごせますが、ストレス因子へのとらわれはまだ完全には消えていません。
この時期は、日常生活へもどるための準備期間です。
今回の適応障害の原因となったストレスへの対処を試みることが重要です。また、今後の適応障害の予防のために、ストレス耐性を向上させる方法を学ぶ時期でもあります。
ステージ3:実行期
実行期は、回復期を経てストレス因子へのとらわれを克服し、日常生活に戻るステージです。
日常に戻る過程でストレスがかかるため、適応障害の再発に注意が必要な時期でもあります。
回復期で身につけたストレスマネジメント法を実践しながら、日常生活に少しずつ慣らしていきます。
適応障害の3つのステージにおける治療
適応障害では、各ステージに適した過ごし方をすることが治療につながります。
次のステージに進むには、その時期に合った過ごし方をして、無理をしないことが重要です。
①休養期、②準備期、③実行期
それぞれにおいてどのような治療を行う必要があるか、概要を説明します。
休養期:充電
休養期のキーワードは、「充電」です。
ストレス因子によって受けたダメージを修復し、エネルギーの回復に専念します。
第一に、適応障害の発症直後は「とにかく休むこと」が重要です。
ストレス因子からいったん離れ、安心して過ごせる場所でしっかりと休みます。
少しずつ元気が出てきたら、好きなこと、気の向くことをしながら,エネルギーを蓄えます。
趣味や散歩などの気晴らしや、ペットや子どもに癒してもらうのは、とてもおすすめです。

あえて意識を「外」に向けることで、ストレス因子から意識を反らし、ネガティブ思考の悪循環を断ち切る効果があります。
ただし、この時期は、エネルギーを消耗しやすく不安定です。
無理はせず、気が向くことをやるようにしましょう。
生活リズムは可能な範囲で整えることが望ましいですが、こちらも無理はしなくてokです。
ただし、睡眠時間を確保することは意識したいです。
睡眠は、体力の回復に重要です。
また、不眠が続くと脳が休まらず、ネガティブ思考に陥りやすくなります。
主治医に相談し、睡眠薬の力を借りてでも、しっかりと睡眠を確保しましょう。

最初はストレス因子のことがなかなか頭から離れないかもしれません。
しかし、休養と充電を心がけて過ごすことで、少しずつストレス因子のことを考えない時間が増えていきます。
とても辛い時期ではありますが、必ず抜けられます。
「充電」をキーワードにエネルギーの回復を待ちましょう。
準備期:ストレスマネジメント
準備期は、前述の通り、エネルギーが戻ってきた段階です。
目安としては「ストレス因子を思い出したときの不安や動揺が弱まってきた」と感じたタイミングです。
準備期は、意識を「内」に向けて自分と向き合い、日常生活に戻る前にストレスマネジメント法を身につける、適応障害の治療のメインともいえる非常に重要な時期です。
具体的には、①ストレス体験の振り返りと対策、②ストレス耐性の向上に取り組みます。
休養期にストレス因子から離れたことで元気になったように感じるかもしれませんが、まだまだ脆い状態です。
適応障害を根本から克服し、再発を予防するためには、ストレス体験を振り返り、ストレス耐性を向上させることが必要になります。
①ストレス体験の振り返りと対策としては、今回の適応障害の原因を振り返り、環境調整を含めた対策を考えます。
②ストレス耐性の向上としては、健康的な生活習慣、ストレス解消法、考え方のクセの修正、自己観察などを通じて、「ストレスに負けない土台作り」をおこないます。
自分の辛かった体験を克服し、人生を再スタートするためには不可欠なステップです。
エネルギーを消耗するステップではありますが、ここを乗り越えれば自信につながります。
無理はせず、体調のいいタイミングで少しずつ取り組みましょう。

実行期:実践
実行期は、回復期で準備を整えたあとに日常生活に段階的に戻る時期です。
この時期はストレスがかかり、再発のリスクもあるため注意が必要です。
段階的にストレスをかけることがポイントであり、例えば、復職するときには通勤訓練や負担の少ない業務から始める、といったステップを踏むことが推奨されます。
ストレスにさらされることで疲れたり、「やっぱり上手くいかない」「まだダメなんじゃないか」と不安を感じることも多い時期です。
そんなときも焦らずに休息をとりつつ、ストレスマネジメント法を試しながら、少しずつ前進していく意識を持つことが大切です。
また、実践のなかで、新たな課題が見つかることもあります。
そうした課題に一つ一つ向き合い、乗り越えることで、日常生活に戻る自信が徐々に培われていきます。
ここでも大切なのは焦らず、無理をしないことです。
自分の心のサインに耳を傾け、自分のペースで進んでいきましょう。

まとめ
いかがでしたでしょうか?
適応障害では、①休養期、②準備期、③実行期の3つのステージに応じた適切な治療を行うことが重要であり、各ステージでの適切な対応が回復の鍵となります。
休養期ではとにかく休んで充電を優先し、準備期ではストレス体験の振り返りとストレス耐性の向上を図ります。維持期にはストレスマネジメント法を実践しながら、段階的に日常生活に戻ります。
人によってそれぞれのステージにかかる時間は違います。
また、日によって調子のいいときもあれば悪いときもあり、「やっぱりまだダメだ」と落ち込んでしまうこともあると思います。
しかし、適応障害は時間をかければ必ず克服できる病気です。
自分がどのステージにいるのかを客観的に捉えながら、焦らず一歩ずつ進んでいきましょう。


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